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鍋田さん物語

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僕の駐在が終わった後もずーっと駐在し続けている鍋田さんと珍しく会社で会った。
挨拶もそこそこに「ちょっとちょっと。聞いてやー」と休憩室に引っ張られた。

僕の駐在期間の後半頃から現場のアイラという作業員がどうも鍋田さんに気がある様子だった。
「うめさん、鍋田さんの下の名前教えてー」と聞かれて教えたこともある。
その数日後、アイラは僕と鍋田さんにそれぞれ名前入りの貝のキーホールダーをプレゼントしてくれた(もちろん、僕の方はダシに使われたのである)。

僕が帰国した後も、アイラの鍋田さんへのアプローチは絶えなかった。
「一緒に遊びに行こう」とか「これあげる」とか、鍋田さんが断っても断っても懲りなかったのだ。
ちなみにアイラは黒い現地的容貌で、まったく鍋田さんの好みではない。

そのうち、アイラが夜勤をしている真夜中でも鍋田さんにメールが入るようになり、いい加減辛抱タマランようになった鍋田さんはリーダーに何とかしてくれ、と訴えた。
数日はメールが来なくなるが、しばらくすると復活。
ついに鍋田さんはメールの証拠写真を撮り、再度リーダーに見せてやめるように頼んだところ、アイラの方が鍋田さんからセクハラを受けていると裁判に訴える、というワケの分からん話になり、「本当に訴えられたら日本に帰られへんって言われてなあ、まいったわー」なのだそうだ。

明後日にまたフィリピンに戻り、何度目かの弁護士との話があると憔悴しきっていた鍋田さんであった。
コワい国じゃのう。被害者が加害者になるんか!?

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