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2001-09-10
バスの中のコント
- 2001-09-10 (月)
- プライベート
行きのバスの中で、後ろの方の席から声が聞こえる。
「両替は・・・今、した方がよろしいんじゃろな?」
「そうですね、降りるときにすると混みますから」
どうやら要領を得ないじーちゃんとその隣りに座っている親切なビジネスマンの会話らしい。
利用しているバスでは、降りるときに料金を払うことになっている。そして、小銭を持ち合わせていない場合は降りるまでに両替するように、混雑を避けるためになるべく降り際の両替はしないように謳われている。
「じゃあ、今、両替したらいいんですな?」
「いや、今はバスが動いてて危ないですから、信号で止まった時にしたらいいですよ」
「そうですか。両替は、降りる前にした方がいいんですな?」
「そうですね、降りる直前じゃなくて、バスが止まった時にしたらいいですね」
親切なビジネスマンも、適当に相手をすればいいものを、人が良いのかとことん親切に説明してあげている。
「小銭、持ってないんで、両替、した方がいいですな。降りる時でよろしいかな?」
「いや、降りるときは他に降りる人の迷惑になりますから、それまでにした方がいいですね」
「わし、終点まで行くんですわ。それまでに、両替した方がいいですな?」
「そうですね、終点は降りる人が多いですからね」
同じような会話が延々と続く。じいさん、ボケているのか、ホントに同じ事ばっかり繰り返して訊ね、しかも動こうとせず、しかもビジネスマンもこれまた丁寧に同じ説明をしている。バスの中はこの二人のやり取りしか聞こえない。
そうこうするうち、バスは終点に近づいていた。そして終点前の最後の信号に引っ掛かり、止まった。
「あ、今、止まりましたね。今がいいですね。両替に行った方がいいですよ」
「そ、そうですか」
じいさんはようやく重い腰を上げ、よたよたと後ろから一番前の両替機のところまで歩いていった。
早く行って両替せな、信号か変わってバスが発車するよー、と僕も心配になって見ていると、じいさんがとどめに運転手に訊ねた。
「両替、ここに札入れたらいいんですな?」
「危ないですから後でいいですっ!」
乗客一同、笑いを堪えるのに必死で肩を震わせていたのであった。
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